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東京地方裁判所 昭和31年(ワ)4019号 判決 1958年2月27日

日本相互銀行

事実

原告西泰徳は本件家屋を所有しているものであるが、被告株式会社日本相互銀行は本件家屋につき、債権者被告、債務者訴外大貫康繁、債権極度額金七十万円の根抵当権を有するとしてその設定登記をなしている。しかし原告は被告主張のような根抵当権設定契約をなしたこともなく、且つその設定登記手続をなしたこともない。右は何れも原告の母西武子が原告に無断で原告名義を冒用してなしたものであるから、原告は被告に対し右根抵当権の不存在並びに同抵当権の設定登記の抹消を求めると述べた。

これに対し被告株式会社日本相互銀行は、昭和二十七年七月頃訴外大貫康繁が被告と取引の上将来債務を負担するに当り、原告はその極度金七十万円までを保証し、且つ原告所有の本件建物に第一順位の根抵当権を設定することを約したもので、原告はこれにより右大貫より借入金の一部を使用させて貰う約定をしていたのである。更に右根抵当権設定登記手続については原告はその母西武子にその事務を委任し、右武子がこれを処理したものであるから、原告の請求は失当であると抗争した。

理由

本件建物が原告所有のものであるところ、被告株式会社日本相互銀行は右建物につき債権者被告、債務者訴外大貫康繁とし、債権極度額金七十万円の債務を担保するため昭和二十七年八月二十七日付で根抵当権の設定契約が存在すると主張し、且つ右建物につき右抵当権の設定登記をなしたことは何れも当事者間に争がない。

そこで右抵当権の存否並びにその登記につき判断するのに、証拠を綜合すればこれらに使用された書証はすべて原告の母西武子が原告の印鑑を使用して作成したものであることが認められるから、更に進んで西武子が原告の代理人として本件根抵当権の設定契約並びにその登記をなしたものであるかどうかについて考えてみる。

証拠によると、訴外小松輝久は西武子の娘婿であるが、訴外大貫康繁の被告銀行に対する債務を担保するためその所有にかかる土地を抵当物件として提供していたところ、右土地を売却する必要を生じ、その抵当の解除を望み、右武子に対し抵当物件の肩替りを求めた。武子はその肩替りにより一カ月金一万円の謝礼の得られる約定のあること、並びに小松家との特殊関係を考慮して、本件建物を以てこれに充てることを考えたが、原告よりその旨の了解を得ることが困難であると推断し、原告に無断で、原告の印鑑を使用して前示契約並びに登記事務の処理をなしたことが認められる。

してみると、結局本件建物に対する被告主張の根抵当権設定契約の成立は認め難いことに帰するから、原告の請求は理由があるとしてこれを認容した。

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